■目次
プロに聞く動画編集ソフトの選び方
YouTube投稿に欠かせない動画編集ソフト。
今や誰しもが自分自身のチャンネルを持ち、クリエイターになれる時代となりました。
子どもの将来なりたい職業としても「YouTuber」がトップ10にランクインするほどです。
⇒2021年度 小学生「将来なりたい職業」ランキングトップ10
多くの方がYouTuberを目指すなか、スマホのカメラで映した映像をそのまま投稿してもなかなか目を引く動画を作ることは難しいかもしれません。
とはいえ、「動画編集ソフトって何を使ったらいいか分からない」「プロはどんなツールを使っているの?」と、初めて編集する方にとっては色々と疑問が出てくることかと思います。
今回は、YouTubeの動画編集業務を行っているプロのクリエイターに、「プロの現場で使われている動画編集ソフト」や「動画編集ソフトの選び方」、「おすすめの編集ソフト」などについてインタビュー!
動画編集ソフトを選ぶ際の参考にしてみてください。
今回取材にご協力頂いたプロクリエイター
■Oさん
テレビ番組の制作会社に4年間従事した後、1年間フリーの動画クリエイターとして活動。
動画編集の経験を活かし2021年3月に株式会社Kiiiに入社、現在は動画編集チームのリーダーを務めます。
主な業務はYouTube動画の編集。
企画提案から撮影、データアナリティクス(チャンネル分析)など、動画編集のみならず幅広い業務をこなします。
そもそも…動画編集とは?
編集ツールのお話の前に、まずは基本的な「動画編集業務とは?」について伺っていこうと思います。
(1)動画編集の工程
hiro
Oさん、本日はよろしくお願いします。
まず、すごく基本的な話にはなるんですが、動画編集ってどんなことをするのかを教えて頂きたいです。
-Oさん
動画編集を簡単に説明すれば、「長尺で撮った動画を見やすくする作業」です。
主な流れとしては、「必要なシーンをカットして繋ぎ合わせる」「テロップを入れて見やすくする」「画面の色調補正」「BGMや効果音を付ける」などの加工を施し、1本の動画として書き出すといった感じです。
(2)動画編集の作業時間
hiro
1本の動画を作るのに大体どれくらいの時間がかかるのでしょうか?
-Oさん
動画の尺にもよりますが、例えば1時間の撮影素材を10分にまとめるだけでも1日はかかります。
動画内で話している言葉にフルでテロップを付けるだけでも1時間以上かかる作業です。
また、自分が撮影に立ち会っていない素材を編集する場合は、1からどのシーンを使うかといった判断も必要になります。
その場合、一旦素材全てに目を通す必要があるので、自分が撮影した素材を編集するよりも時間は多くかかりますね。
プロが使用している動画編集ソフトはなに?
さてここからが本題です!
プロが実際の動画編集時に使用しているソフトについて伺っていきます。
(1)Oさんが現在使用している動画編集ソフト
hiro
普段Oさんが使用している動画編集ソフトについて教えてください。
-Oさん
普段使用しているのは、「Adobe Premiere Pro(アドビプレミアプロ)」です。
「Adobe Premiere Pro」はYouTuberの方はもちろん、制作会社をはじめとする動画編集の現場で今最も多く利用されている編集ソフトなのではないでしょうか?
実際、今の動画編集チーム内でも基本的に「Adobe Premiere Pro」を使っていますね。
制作チーム内で編集ソフトがバラバラというケースがない事もないんですが、他のメンバーが行っているプロジェクトを引き継ぎやすいという点からも基本的にソフトは統一されているのではないでしょうか。
hiro
なるほど。
ではどうして「Adobe Premiere Pro」が人気なんでしょう?
-Oさん
理由は様々あると思うのですが、実際に使用している立場として、Adobe社のソフトなので「Photoshop(フォトショップ)」や「Illustrator(イラストレーター)」など、同じAdobe社製のソフトとファイルの連携がスムーズにできるのは便利だなと感じますね。
また、これも主観になりますが、他のソフトに比べ凝ったテロップデザインを作れる点がいいなと思います。
(2)Oさんの編集ソフトの使用遍歴
hiro
Oさんは以前、テレビ番組の制作会社で働いていたとのことですが、その時も「Adobe Premiere Pro」を使用していたのですか?
-Oさん
番組制作の会社で働いていた当時は「Final Cut Pro(ファイナルカットプロ)」を使用していました。
バージョンで言うと「7」になります。
私に限らず、数年前までの動画制作現場では「Adobe Premiere Pro」より「Final Cut Pro」を使っている人が多い印象でした。
(3)制作現場における主流ソフトの変遷
hiro
主流ソフトがここ数年で入れ替わったということですか?
-Oさん
そうですね。
というのも、「Final Cut Pro」はApple社製なのでMacにのみ対応したソフトになるんですが、2017年にリリースされたMacOSのバージョンアップによって「Final Cut Pro 7」がサポート終了になってしまったんです。
「Final Cut Pro」は2011年に「バージョンX(10)」がリリースされていたのですが、「7」と「X(10)」では操作性やワークフローの点で大きく異なる仕様になっていました。
そういった理由から、「7」とUI(※ユーザーインターフェース)が似ていた「Adobe Premiere Pro」へと移行する人や、そのまま「7」を継続して使用している人も多くいたのですが、2017年のサポート終了に伴って「Adobe Premiere Pro」が徐々に主流になっていったと思います。
※UI…サービスやプロダクトとユーザーの接点。アプリとそのユーザーの間で情報をやり取りするための表示画面や操作方法などを指す。
(4)動画クリエイターが使っている編集ソフトの定番
hiro
なるほど。
では、「Adobe Premiere Pro」以外でクリエイターに支持されている動画編集ソフトがあれば教えて頂きたいです。
-Oさん
ん-、「Adobe Premiere Pro」以外だとやはり「Final Cut Pro」ですかね。
この2つのどちらかが定番になってくると思います。
最近では「Filmora(フィモーラ)」や「Canva(キャンバ)」を使っている人もいますが、まだ分母は少ないかなといった印象です。
「Adobe Premiere Pro」と「Final Cut Pro」の違いは?
動画編集の現場では現在、Adobe社とApple社の2メーカーからそれぞれに販売されている「Adobe Premiere Pro」と「Final Cut Pro」が定番ソフトとして使用されているというお話でした。
続いては、この2つのソフトの違いについて深堀りしていきたいと思います。
(1)料金システムの差
hiro
業界では2つの編集ソフトが定番ということですが、違いについてもう少し詳しく教えてください。
-Oさん
まずは、サブスク制か買い切りかという基本的な料金システムが異なります。
価格も結構違うので、長く使うのであれば「Final Cut Pro」の方が費用面では安くなりますね。
■「Adobe Premiere Pro」の料金
単体プラン | 2,728円(税込)/月 |
コンプリートプラン | 6,480円(税込)/月 |
学生・教職員向け | 1,980円(税込)/月 |
法人版 | 4,380円(税込)/月 |
※コンプリートプラン…Premiere Proを含む20以上のCreative Cloudアプリが利用可能
※学生・教職員向け…Premiere Proを含む20以上のCreative Cloudアプリが利用可能
※法人版…Premiere Proを含むすべてのCreative Cloudアプリ+法人専用の機能が利用可能
※年間一括払いも可能
※出典:https://www.adobe.com/jp/creativecloud/plans.html
■「Final Cut Pro」の料金
買い切り | 36,800(税込) |
※90日間無料
※出典:https://apps.apple.com/jp/app/final-cut-pro/
(2)対応機種
-Oさん
また、ソフトを利用できるPCの機種も異なります。
「Adobe Premiere Pro」はMacでもWindowsでも利用可能ですが、「Final Cut Pro」はMacにのみ対応したソフトです。
(3)操作性
-Oさん
両方のソフトを使った経験から言うと、「Final Cut Pro」の方が操作が楽かなと感じます。
一方の「Adobe Premiere Pro」はちょっと複雑なイメージです。
ただ、「Adobe Premiere Pro」は特にテロップの編集面では凄くこだわることが出来ると感じます。
現在のYouTube市場では凝ったテロップを使っている映像が多いので、そういう意味では「Adobe Premiere Pro」が支持されているのかなと。
無料ツールと有料ツールの違いは?
続いては、無料ツールと有料ツールの違いについて聞いていきたいと思います。
(1)無料版と有料版の違い
hiro
今は無料で使えるツールも結構あると思うんですが、有料版との違いはどこにあるのでしょう?
-Oさん
やはり機能性ですね。
無料のソフトだと、基本的にエフェクトがテンプレートの中からしか使えないというものがほとんどです。
また、BGMは入れられるけど効果音が入れられなかったり、テロップに付けられる効果も例えば境界線が1つだけだったりと、かなり制限があると思います。
あと、画面の端にソフトやアプリの名前がうっすらと表示されたり、何かを使用するために広告が表示されたりするものもあるので、これはちょっと邪魔ですね(笑)。
費用面ではメリットはありますが、クオリティの面ではやはり有料版に追いつかないかなと思います。
(2)本格的に始めたいなら有料ソフトがおすすめ
hiro
はじめてソフトを触る人の場合は、どちらから入るべきでしょう?
-Oさん
頻度や用途によるかなと思います。
例えば、友達の結婚式のお祝いムービーを作る為だけ!とかなら全然無料版でいいですよね。
1回きり、年に数回とかなら費用面でも負担がない方がいいですし(笑)。
ただ、本格的にYouTubeやSNSを通じて動画投稿をしていくのであれば、しっかりと有料版を使うべきかなと思います。
パソコンはWindowsとMac、どっちを買うべき?
ソフトの前にまずはパソコンを!
「WindowsとMacならどちらの方がいいの?」
気になる疑問を聞いてみます。
(1)Windows or Mac
hiro
クリエイティブな職業の人はなんとなくMacを所有しているイメージなんですが、動画編集に際してはWindowsとMac、どちらがおすすめですか?
-Oさん
自分はずっとMacを使用していて、Windowsで動画編集をしたことが無いので何とも言えないところではあるんですが…(笑)。
例えば、使いたいソフトがあればそれに対応しているPCを買う、というのは1つの考え方ですよね。
「Adobe Premiere Pro」はWindowsにも対応していますが「Final Cut Pro」はMacだけしか使えないので、もし「Final Cut Pro」を使いたいというのであれば必然的にMacがおすすめということになります。
ただこれは個人的な見解ですが、Macの方が対応している編集ソフトが多いと思うのでMacを選択しておくほうが無難な気はしますね。
実際、今の動画編集チームでも新人の方が入社されたときは、元々Windows派だった方でもMacで作業してもらうようにしています。
ショートカットキーとかが違うので、Windowsで慣れてると最初は苦戦しますが…(笑)。
(2)制作現場は基本Mac
hiro
テレビ番組制作の現場でもMacが主流でしたか?
-Oさん
そうですね、Windowsで作業している人はあまり見たことないかなぁ(笑)。
私がいた当時は、先ほども話した通り「Final Cut Pro」が主流だったので、その影響もあるんじゃないかなと思います。
おすすめの動画編集ソフトについて
これから動画編集ソフトを使ってみたい!という方に向け、プロのクリエイター視点でアドバイスを頂きました。
(1)はじめて買うソフトは定番がおすすめ
hiro
初めて動画編集ソフトを購入する方には、どんなソフトがおすすめですか?
-Oさん
「全くの初心者」という方にはやはり「Adobe Premiere Pro」か「Final Cut Pro」がおすすめですね。
ユーザーの数が多いほど、初めてでも使いやすいのかなと思います。
というのも、もしなにかやり方について困ったことがあってもネットで検索すればHow to記事や解説動画が出てくるので、基本的なことは解決することが出来るかなと。
(2)購入時の注意点
hiro
逆にこれは避けた方がいいというのはありますか?
-Oさん
先ほどとは逆に、マイナーすぎる製品を購入してしまうと、やり方で困ったときに検索しても解決策がすぐに出てこない場合があります。
特に「これから動画編集を始めるぞ!」という方にとっては、何よりも継続することが大切です。
つまずいたときに解決策が分からないという状態はなるべく避けたいですよね。
(3)おすすめ3選
hiro
全くの主観で構わないのですが、Oさんが思うおすすめソフトTOP3を教えて頂きたいです!
-Oさん
そうですね…分かりました!(笑)。
強いて順位を付けるならですが…
1.Adobe Premiere Pro
2.FinalCut Pro
3.Filmora
ですかね。
やはり最近のYouTubeの動画傾向を鑑みたときに、「Adobe Premiere Pro」は凝ったテロップの編集ができるという部分でこっちほうがいいのかなと。
また、3位に挙げたソフトは実際に自分でも触ったことがあるのですが、「Filmora」は、エフェクトを自分で作らなくても最初からおしゃれなテンプレートが入ってるところがおすすめです。
(4)無料版について
hiro
無料で使える編集ソフトでおすすめはありますか?
-Oさん
これは正直、おすすめを上げるのはなかなか難しいですね。
動画編集を仕事にしている人で、無料ソフトを使っているという人が基本的にいないというのが理由なんですが…(笑)。
やはり、動画クリエイターになりたい!となった時に、無料ソフトでお金を頂けるレベルのクオリティに仕上げるのは正直厳しいのかなと。
無料ソフトだと、「自分で構想を練ってイメージした映像よりさらに上のクオリティにする」というのに限界があると思います。
そういう意味でも、プロを目指すなら初めから有料版を選択した方がベターかなと思います。
ただ、有料版でもそれぞれ無料トライアル期間や体験版があるソフトもあるので、そこで比較してみるというのはおすすめです。
(5)スマホアプリについて
hiro
スマホアプリについてはどうですか?自分もiPhoneに元々入っていた「iMovie」を使ったことがあるんですが、結構色々操作できますよね。
-Oさん
確かに無料アプリでも、スマホ1台で映像に音楽を追加できたり携帯のマイクから音声を入力して映像に重ねられたりと、結構便利なアプリもありますよね。
ただ、スマホはPCほどの処理スペック無いので、長尺なものを編集しようとすれば重くなったりもします。
それから基本スマホは指操作なので、テロップを出すタイミングとかを微調整したい場合に難しさを感じるのかなと思います。
また、付けれるテロップデザインもシンプルなものだけだったりしますね。
動画編集ソフトを習得するまでにかかる期間は?
ここからは、動画編集ソフトの習得に関するお話を伺っていきたいと思います。
(1)編集ソフト操作の習得方法
hiro
Oさんは編集ソフトの操作をどのように習得されましたか?
-Oさん
大学を卒業して入社したのがテレビ番組の制作会社だったのですが、それまで使っていたPCもWindowsで、編集ソフトも触った経験がないという全くの初心者でした。
それこそ、SNSへの動画投稿用に無料アプリをダウンロードして少し触ったことがあるくらいのレベルです(笑)。
なので、就職してからはじめてMacを触り「ロケ素材をカットする」というところから始まりました。
hiro
編集ソフトに慣れるのに苦労しましたか?
-Oさん
そうですね、そもそも最初はショートカットキーすら分からなかったので(笑)。
(2)編集ソフト操作の習得期間
hiro
ソフトを扱えるようになるまでどれくらいの期間がかかりましたか?
-Oさん
映像をカットするという工程だけなら1週間ほどで出来るようになりました。
仕事をこなすレベルになるには、それこそ毎日触って2~3ヵ月くらいあれば出来るようになると思います。
hiro
2~3ヵ月ですか。1年ぐらいかかるのかと思ってました(笑)。
-Oさん
そこまではないです(笑)。
でも私の場合は、仕事で毎日触っていたというのも大きいです。
独学で学ぶとなると、継続できるかがポイントになってくると思います。
習得期間は人それぞれだと思いますが、毎日触って操作に慣れることが大切です。
(3)専門学校について
hiro
動画編集の専門学校や専門講座もあるかと思いますが、動画クリエイターになるには通ったほうが良かったりしますか?
-Oさん
そうですね、実際周りには専門学校出身の人も多かったです。
ただ、全く関係のない学部から業界に飛び込んだ身からすると、行かなくても大丈夫です!(笑)。
特に映像業界は「現場第一主義」みたいなところもありますので、前持った知識が役立つケースもなくはないですが、そこまで重要かと言われればそうではないかと思います。
ただし、0から業界に飛び込むにはある程度「根性」は必要ですよね(笑)。
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hiro
最後に、動画クリエイターを目指されている方にアドバイスをお願いいたします!
-Oさん
実際に始めるとなると購入費用もかかりますので、自分が動画編集を続けることが出来るのかを確認するという意味でも、まずは無料で使えるソフトを使って1本動画を作成してみることをおすすめします。
「もう既にソフトを買う意思がある!」「購入した!」という人は、人の動画をマネしながらとにかく触り続けてみてください。
短時間でも毎日触り続け、人気のある動画の編集を見てマネし続けることで自分のできる範囲がどんどん広がっていきます。
また、動画編集は一人で行う孤独な作業なので、ずっと同じ素材を見続けるといった忍耐力も必要です。
苦になる瞬間もあるかもしれませんが、続けていれば必ずどこかで自分の好きな作業が見つかると思います。
無理のない範囲でコツコツとスキルを磨いていく、結局これが一番の近道なのかなと思います。
hiro
今回は動画クリエイターのOさんに動画編集ソフトに関する様々なお話を伺ってきました。
これから動画編集ソフトの購入を検討されている方は是非、現場のリアルな声も参考にしてみてください!
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